目的は複視を解消すること・・・・?
複視の事例
交通事故に遭い、長期間右眼が開かなかった。
開いたら複視になっていた。
眼科処方箋をご持参されていました。
右眼 膜プリズム 20△ 基底 70~80°
備考欄には、
右眼筋麻痺で上下方向に動きが障害されています。複視は顎の上げ下げで変わりますが、基底方向は上方から少し鼻側に回して、自覚的によい方向ではってください。
と書かれています。
実際に20△フレネル膜テストレンズで、試していただきました。
まず、80°から 「ものが二つにみえます・・・」とのこと。
75°では「これもダメ」
70°では「同じこと・・・・」
他の方向(基底)でも「複視です・・・・」
さてさて、困りました・・・・。
自覚的には20△では、よい方向がありません。
とりあえず、当店でプリズム度数の検査をしてみました。
備考欄にも書かれていたように、
麻痺性の斜視は視方向によって、偏位量が異なることは珍しいことではないので、視線に配慮して検査をしました。
距離を変えての検査もしてみました。
不安定な要素もあると思いますので、検査方法も複数の検査を実施しました。
結果、 右眼10△~12△B.U. 5△~6△B.I.
ぐらいの矯正で複視が解消されます。
さてさて、ではどうするかです・・・・。
「そんなもん、複視が解消されるプリズム度数で作ったらいいのじゃないの!」と思われるかたも少なくないと思います。
だけど、そうは簡単にはいかないのです。
病気ではない普通の大人のメガネ調製ならいざしらず、(それでも処方箋度数絶対厳守の店もあります)この場合、「麻痺性斜視」という病的なものが絡んできます。
今後、お客様と眼科との関係のこともありますし、処方箋通りに作らないと問題が起きる恐れが出てきます。(眼科に睨まれるとか・・・・)
一介の商売人としたら、やはりそれは怖い。
それと、「意図してプリズム矯正を多くして、裸眼とは逆方向の複視を発生させて、治療する」狙いかも知れません。
(そんな治療方法があるのかどうか知りませんが、でも、それなら備考欄にはあのようなことは書かないと思います。お客様もそのようなことはおっしゃっていませんでした)
なので、無難な対応としては、処方箋通りに作りたいのです。
その場合、やはり結果が悪くても「自店に責任はありません。処方箋通りに作りましたから・・・」という対応ができます。
でもユーザー本位に考えると「それでいいの?」ってことになります。
「再度眼科に行ってください」と言うのも無難な方法なのですが、このお客様は事故で体が弱っている高齢者のかたです。
かえって、ややこしくなるのは目に見えているし、この方法もユーザー本位ではありません。
ユーザー本位にやればやるほど、眼科に睨まれる現実もありますが、
今回、お話合いの結果、
当店処方プリズム度数で調製することになりました。
お客様とのお話合いで、問題点は改善していきます。
次の日に仕上がりメガネをお渡ししますと「眼が開けられます」とおっしゃっていただけました。
さてさて、眼鏡士としては今回の対応でよかったと思いますが、今後どうなるやら。
目的が「複視を解消するため」であれば、眼科からお咎めはないと思います。(多分)
もし、そうでない場合は・・・・・
ユーザーさんは、ひとまず満足してくれたし、今後お気軽に当店に相談できるようにも配慮しました。
でも、眼科からすれば「おもしろくない」感情になるかも知れません。
それだけ、眼科はユーザーの感情に慮る余裕がないほど忙しいのですね。
「プリズム度数は、プリズム調製が得意なメガネ屋と相談して、具合の良さそうな度数で作ってください」としてくれたら、どれほどやりやすいか・・・・。
なお、眼科処方プリズム度数 20△は間違っているわけでないので、誤解のないようにお願いします。
その時点では20△が検出されて、病院内では「具合がよさそう」ということだったのでしょう。
「環境が変われば、プリズム度数(麻痺)も変化する」ことも日常よくあることです。
今回も病院のような非日常的な環境よりも、リラックスできる当店検査のほうがプリズム量が少なくなった・・・・」ことも考えられます。
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