複視は辛い 46

<複視の事例 10>

今回、お話合いの結果、当店処方プリズム度数で調製することにしました。
今後、プリズム度数は大幅に変更することも予想されます。
その場合、お客様とのお話合いで、問題点は改善していきます。

なお、眼科処方プリズム度数 20△は間違っているわけでないので、誤解のないようにお願いします。その時点では20△が検出されて、病院内では「具合がよさそう」ということだったのでしょう。
「環境が変われば、プリズム度数(麻痺)も変化する」ことも日常よくあることです。

病院のような非日常的な環境よりも、「リラックスできる当店検査のほうがプリズム量が少なくなった」ことも考えられます。

複視は辛い 45

複視の事例 10

80代のJ様

交通事故に遭い、長時間右眼が開かなかった。開いたときには複視になっていました。
とご来店されました。

眼科処方箋をご持参されていました。

右眼 膜プリズム 20△ 基底 70~80°

備考欄には、
右眼筋麻痺で上下方向に動きが障害されています。複視は顎の上げ下げで変わりますが、基底方向は上方から少し鼻側に回して、自覚的によい方向ではってください。
と書かれています。

それで、実際に20△フレネル膜テストレンズで、試していただきました。

まず、80°から 「ものが二つにみえます」とのこと。
75°では「これもダメ」
70°では「同じこと」
他の方向(基底)でも「複視です」とおっしゃいます。

さて、困りました。自覚的には20△では、よい方向がありません。
とりあえず、当店でプリズム度数の検査をしてみました。

備考欄にも書かれていたように、麻痺性の斜視は視方向によって、偏位量が異なることは珍しいことではないので、視線に配慮して検査をしました。
距離を変えての検査もしてみました。
不安定な要素もあると思いますので、検査方法も複数の検査を実施しました。

結果、 右眼10△~12△B.U. 5△~6△B.I.ぐらいの矯正で複視が解消されます。

では、どうするかです。
「複視が解消されるプリズム度数で作ったらいいのじゃないの!」と思われるかたも少なくないでしょう。

だけど、そうは簡単にはいかないのです。
病気ではない普通の大人のメガネ調製ならいざしらず、(それでも処方箋度数絶対厳守の店もあります)この場合、「麻痺性斜視」という病的なものが絡んできます。
今後、お客様と眼科との関係のこともありますし、処方箋通りに作らないと問題が起きる恐れが出てきます。

複視は辛い 44

<複視の事例 9>

内斜位は外斜位に比較して、問題が発生しやすい眼位です。

・眼精疲労
・物が時々に二重に見える
・遠近感が悪くなる
など。
内斜位を補正する役目である外直筋の作用は内直筋に比較して弱いからです。
脳は基本的に複視を避けようとしますが、頑張っても力の弱い外直筋は悲鳴をあげます。

その悲鳴は身体の悲鳴に繋がります。

そういう日頃の外眼筋の負担があるきっかけで、大きく爆発することもあります。

近視で内斜位のかたの場合、違和感などの問題で掛けづらいことも予想されますが、できるだけ適切に眼位を整えておくことをおすすめします。

また、子供の遠視も問題が起きやすい眼です。
遠方の視力がいいからといって、正視とは限りません。ご注意を。

複視は辛い 43

<複視の事例 9>

I様は高校生ぐらいまでは視力は1.5~2.0あったとのことです。
だとすれば、もしかしたら遠視があったのではないでしょうか。
軽い遠視だったとすれば、視力には問題ないし、調節力が旺盛な10代のころは近業もそんなに不自由ありません。

しかし、遠視が原因の内斜位は存在していた。

やがて、10代の終わりごろに眼の屈折は近視に移行したが、遠視だったころの記憶を脳は保持したままになっている。
眼位は内斜位が残ったままになっていた。
推測ですが、これも「近視で内斜位」になる原因の一つでしょう。

眼(外眼筋)のメカニズムからすれば近視は外斜位になりやすいのですが、「近視で内斜位」は外傷的因子は別としてハッキリとした原因がわかりません。

内斜位は外斜位に比較して、問題が発生しやすい眼位です。

 

複視は辛い 42

<複視の事例 9>

ある日、I様からお電話をいただきました。
「私のプリズム度数はどれぐらいでしたか?」と。かかられている眼科から電話をかけているとのことです。

I様にはプリズム度数はお知らせしていたのですが、その書類を持参していないので、当店に問い合わせをされました。

この問い合わせは「眼科がプリズム度数を確認する」ためのものです。

レンズのプリズムはレンズメーターで測定すればわかるのですが、プリズム測定に苦手な眼科もあります。
眼科が光学的知識に疎いのは仕方ありません。(ただし、強いプリズムはレンズメーターによっては測定できません)

それはそうと、プリズム度数を訊いた眼科はどのような対応をしたのでしょうか・・・?

眼科によっては「メガネ屋がプリズム矯正をするのけしからん!」と対応するところもあります。


だから、メガネ屋によっては眼科がらみのプリズム矯正に二の足を踏む場合もあります。

これは仕方ないですね。弱い立場のメガネ屋は眼科に睨まれるのは怖いですからね。

私はメガネ屋を非難する眼科さんに言いたい。「目的はなんなのか」をよーく考えてください。

ユーザー本位で考えれば、ユーザーさんが少しでも満足するように上手にメガネ屋を利用してくれればいいんじゃないの!目的が「眼科のプライドを守るため」では、悲しいです。

今回、I様のプリズム矯正に関して、眼科は「けしからん!」と言ったのか、それともユーザー本位の対応をしてくれたのでしょうか。

いずれにしろ、当店の目的は「眼科に睨まれないようにすること」ではありません。

なお、複視のすべてがプリズムレンズで解消されるとは限りません。
「正面を見た場合にはプリズムレンズが有効だが、側方視では複視になる」ということもあります。

斜視の種類や斜視の程度によってもプリズムレンズが有効でない場合もあります。というか深い抑制が入っている普通の斜視にはプリズム矯正はほとんど無効です。

片眼だけにプリズムレンズを入れたほうがいい斜視もあります。

複視は辛い 41

<複視の事例 9>

眼位は検査方法によって結果が違って出る場合もあります。
今回、ある検査では8△~10△、もう一つの検査では13△B.O.でした。

120日目
内斜位量 10△B.O.
メガネそのものを作り直すことになりました。

R Sー1.25D C-0.50D Ax12  2.5△B.O.
L Sー0.75D C-0.75D Ax110 2.5△B.O.

まだ内斜位は残っているのですが、この内斜位は外眼筋麻痺が起こる前にもともと存在していた内斜位の可能性もあります。
ですから、内斜位を矯正する5△B.O.は入れるようにしました。

I様に再度しつこく「何か思い当たることはなかったですか?」とお尋ねしますと、
「インフルエンザにかかり、タミフルを飲みました。でもそれは3ヶ月前だし」とのこと。

あー、ひょっとしたら、それが原因かも?

今回、結果的に眼科の治療は役には立たなかったようです。
でもこういことはやってみないとわからないことですから、仕方ありません。
ただ、眼科は途方に暮れているI様にメンタル面での配慮が足らなかったように感じます。

まぁ、忙しい眼科に手間暇がかかるメンタルケアを期待するのは難しいです。

I様のメンタル面でのアドバイスなどは当店で行い、当店での過去に複視になったかたの事例もお話ししました。

今後I様の事例も参考にさせていただきます。

 

複視は辛い 40

<複視の事例 9>

・ カバーテスト
眼位ズレの検査に用いています。

 

斜位があるのかどうか
斜位なのか斜視なのか
眼位ズレの方向は
など、カバーテストは*両眼視の状態や異常を知る上で欠くことのできない検査です。

斜視、斜位のズレ量などもある程度わかります。

 

複視は辛い 39

<複視の事例 9>

 

メガネ調製後 35日目
内斜視量 40△~45△B.O.
やや斜視量が減ってきています。とりあえず良い傾向です。

50日目
内斜視量 40△B.O.
この段階で10△ぐらいの内斜視量の軽減が見られます。
フレネル膜を25△に貼りかえることをご提案。多めのプリズム矯正はできるだけ避けたいからです。

54日目
注文していたフレネル膜が届いたので、ご来店いただきました。
念のために眼位を測定すると、なんと25△~30△に斜視量が減ってきています。
急遽、10△フレネル膜を再注文。
眼位を確認して良かった。(^^♪

65日目
眼位の検査、20△~22△B.O.になっています。ドンドン減ってきています。
これは、プリズム効果の現れでしょう。

78日目
18△B.O.になっていました。「フレネル膜の10△も入りません」と説明。
しかし、えてして麻痺もぶり返す可能性もあるので、具合が悪くなったら再度貼るようにアドバイスしました。

90日目
カバーテストでは良い状態になっています。最初の眼位とはまったく違ってきています。
「斜視から斜位に移行」という感じです。

複視は辛い 38

<複視の事例 9>

I様の場合も複視になった原因はサッパリわかりません。
外眼筋麻痺の原因は外傷が最も多く、約50%を占めていますが、I様は「外傷はまったくない」とのこと。
他に原因として血管性病変、腫瘍、炎症などありますが、そういうものもありません。

強い薬を飲んだ覚えもない。持病もないということでした。

「職場で、強いストレスにさらされたということはないですか」とお尋ねしますと、
「ウーン、上司か変わったけど、強いストレスということはない」とおっしゃいました。

とにかく外眼筋麻痺になるような原因で、「思い当たることはまったくない」と。

治療として病院ではステロイドやビタミンを処方されましたが、全然よくならず、他の大きい病院を紹介されました。
しかし、その病院でも診断結果は同じこと。
県外の有名な病院も受診してみましたが、やはり「外眼筋麻痺の原因は不明」と言われたそうです。

 

複視は辛い 37

<複視の事例 9>

フレネル膜は35△を左右眼で2枚用意し、交互に貼ることもご提案しました。
これは抑制を防ぐ効果を狙った処置です。

この度数で様子を見つつ、適時プリズム量を調整していく計画を立てました。

フレームはレンズが薄く軽くなる「ウスカルフレーム」を選んでいただきました。
ウスカルフレームは、強度近視のかたに開発されたフレームですが、プリズムレンズとの相性もいいです。

I様の場合はB.O.プリズムで通常のフレームに入れると、耳側のレンズ緑厚が相当厚くなります。
それがウスカルフレームでは、随分と薄く軽く作ることができます。

フレネル膜を貼るのにも好都合です。
フレネル膜の直径は66mmなのですが、たいていのウスカルフレームは、フレネル膜1枚で右眼と左眼の両眼に貼ることが可能です。

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