抑制の話 30

抑制の事例 4

斜位眼は、プリズム眼鏡を掛けると眼位は変化します。(変化しない場合もあります)
人間という動物は変化を嫌う面もありますので、その眼位変化に戸惑うこともあります。
それが違和感として表れてきます。

違和感は時間的要素で解決することは少なくないのですが、どうしても馴染めないかたもいます。
そんな場合は、プリズム量を減らして掛けていただくなどの対応になります。

また、必要プリズムを「ディグリーフリップ」で作る方法もあります。
この方法は、遠用眼位と近用眼位が大きく違うかたにも有用です。

↑ディグリーフリップをつけて、プリズム入りメガネに。
プリズムレンズ+度つきレンズもできます。

↑跳ね上げてプリズムなしメガネに。ディグリーフリップは、取り外しも可能です。

近視で内斜位

近視で内斜位

そもそも近視のかたは、外斜位になりやすいです。
その理由は調節力輻輳力のバランス(連動)が悪くなるからです。

近視のかたが、裸眼で近見視をすれば、正視のかたよりも調節力が少なめですみます。
近視度数や近見距離によっては無調節で近見視ができます。

調節機能を節約すれば、調節性輻輳の働きが悪くなり、眼位ズレが起きることがあります。

近視のかたは輻輳不全になりやすく、外斜位になる確率が高いです。

近視のかたには、多くのかたに多かれ少なかれ外斜位が存在する事実もあります。多少の外斜位があっても、内直筋の働きで問題のないかたも少なくありません。(内直筋の働きが弱いかたもいます)

「近視で軽い外斜位」は正常範囲と言ってもいいぐらいです。


しかし、「近視で内斜位」は問題が発生しやすいです。
・眼精疲労
・物が時々に二重に見える
・遠近感が悪くなる
など。

内斜位を補正する役目である外直筋の作用は、内直筋に比較して弱いからです。
脳は基本的に複視を避けようとしますが、力の弱い外直筋は悲鳴をあげます。
その悲鳴は身体の悲鳴に繋がります。

抑制の話 29

抑制の事例 4

抑制を除去、防止するためのトレーニングの方法もご説明しました。

↑特殊なフィルターレンズを使用してトレーニングをします。
1日、10分~20分ぐらいの簡単なトレーニングで、抑制を防ぐ効果が期待できます。

↑プリズムレンズ
プリズムレンズを通過する光線は、基底(レンズの厚いほう)に進行方向が曲げられます。
像は頂角のほうにズレて見えています。

このプリズムの原理を応用し、右眼上斜位の場合、右眼レンズは基底が下に向く方向(ベースダウン)に、左眼レンズは基底が上に向く方向(ベースアップ)に入れます。

抑制の話 28

抑制の事例 4

選択肢として、
1、プリズム眼鏡はあきらめる
2、眼筋の手術をする
3、ビジョントレーニングをする
4、少な目のプリズム眼鏡から慣らしていく
5、適切なプリズムレンズを掛けてみる

があります。

1は、左眼が完全抑制をして、弱視になる恐れがあります。
2は、手術をしても正常な両眼視ができるかかどうかわかりませんし、リスクの高い手術は避けるべきです。
3は、上下斜位が強いかたには、トレーニングの効果は期待できません。
4は、プリズム眼鏡に馴染みやすくなるかも知れませんが、中途半端なプリズム矯正はかえって複視の発生を増やすことにもなりかねません。
5は、視機能にとって、もっとも良い選択です。

お話合いの結果、E様は5番を選ばれました。

調製度数
R S-2.00D                5.0△B.D.
L Sー2.00D C-0.25D Ax100  5.0△B.U.

プリズム眼鏡に慣れることに、時間がかかることも予想されます。徐々に慣れていただくようにアドバイスをしました。

抑制を除去、防止するためのトレーニングの方法もご説明しました。

抑制の話 27

抑制の事例 4

そもそも抑制とは、 脳が複視を嫌うので、複視を消すために網膜からの刺激を感受することを拒絶することです。
脳が混乱を避けるための防衛反応とも言えるもので、プリズムを入れることにより逆に脳が混乱する場合があるからです。

これが、順応性、適応能力に優れている十代のかたであれば、割合と早くプリズム眼鏡と仲良くなれるのですが、E様は30代後半です。
今まで、抑制していた時間が長ければ長いほどプリズム眼鏡とお付き合いすることが難しくなります。

E様もプリズム眼鏡を掛けると「ウッ、ウッ、ウッ」とおっしゃっていました。

ここで選択肢として、
1、プリズム眼鏡はあきらめる
2、眼筋の手術をする
3、ビジョントレーニングをする
4、少な目のプリズム眼鏡から慣らしていく
5、適切なプリズムレンズを掛けてみる

があります。

抑制の話 26

抑制の事例 4

E様 30歳代

「なんとなく違和感を覚える。寄り目ができない。物がズレるときがある」

5mでの基本度数は
R S-2.25D 
L Sー2.25D C-0.25D Ax100
でした。

矯正視力は
R 1.2
L 1.0
左眼の矯正視力がやや弱いです

眼位(視軸の向き)は、右眼上斜位 10△~13△B.D.
検査方法によって斜位量も異なってきます。
これは、けっして珍しいことではなく融像刺激の違いによって、脳の反応も異なってくるからです。

プリズム矯正をすると両眼視はできるのですが、左眼が時々抑制します(間歇性抑制)。

今までお使いのメガネはプリズム矯正をしていなかったので、ほとんど左眼を抑制していたようです。

さて、E様の場合適切なプリズム矯正をすれば抑制が除去され、おそらく正常な両眼視まで持っていくことは可能なのですが、そのプリズム眼鏡を掛けられるかどうかが問題です。

抑制の話 25

「抑制除去訓練」事例3


メガネ調製半年後、定期検査に来店されました。
立体視が良くなっていました。抑制もなく眼位も安定するようになっていました。

「メガネを掛けることにより、視力も向上した感じがある」とおっしゃっていただけました。
良かったです(^u^)

近視矯正度数、プリズム度数、問題ないので、このままで使用してもらうことにしました。
ビジョントレーニングは、続けるようにお願いしました。


1年後、メガネを紛失されたとのことで来店されました。

今回、5mでの基本度数は
R S-4.00D C-0.25D Ax20
L Sー3.25D C-0.75D Ax180
でした。

やや、近視度数が進行していました。
成長期ですから、成長に伴う近視の進行は仕方ありません。

眼位検査では、前回矯正のプリズム度数でチェックしました。
すべての眼位検査で、抑制は検出されず、眼位も安定していました。
あきらかに、視機能は向上していました。

良かったです(^u^)

しかし、視機能トレーニングはしていなかったとのこと。
D様の場合、プリズム矯正で眼位が安定していたとしても、大きな眼位ズレがあるのには変わりありません。
眼位が不安定になる要素を含んでいる目ですから、またしっかりとトレーニングをするようにアドバイスをしました。

でも、D様に限らず、お子様にトレーニングをしていただくのは難しいです。
やはり、トレーニングは面倒ですし、親御様のご協力も限界がありますから。

私だって、子供のとき「虫歯になるから歯を磨け!」って言われても、面倒ですから、まともに歯を磨かず、歯医者にもなかなかいかなかったので、歯はボロボロになりました。
大人になって「親の言うことは聞いておくべきだった。歯は大事にしておくべきだった」と後悔しています。

目も成長期に高度な視機能を確立していないと、大人になって後悔することもあります。
D様には、引き続き視機能の大切さを訴えていきます。

抑制の話 24

「抑制除去訓練」事例3

抑制をしないような対策は必要です。
「遠視のかたは、内方向(鼻側)に眼位ズレがおきやすく、近視のかたは外方向(耳側)に眼位ズレがおきやすい」ということを頭に入れておいてください。

「遠方が見えづらくなったら、近視のメガネを掛ければそれでいい」ということではありません。
眼位に問題があると、視機能に大きな影響がでてくる恐れがあります。

親御様は、お子様の眼や動作に十分注意をしてください。
・眼つきがオカシイ
・眼を細めて見ている
・眼の動きがヘン
・集中力がない
・首を傾けて物を見ているようだ
などありましたら、眼位や屈折に問題が発生している可能性があります。

 

抑制の話 23

「抑制除去訓練」事例3

親御様には、眼球運動の確認もしていただくようにしました。




少しでも良質の視機能を確保するのは、今という時間がもの凄く大切です。
成長期が過ぎてからでは、斜視に対するトレーニングの効果も期待できなくなるし、プリズム矯正も難しくなります。

D様と親御様と、浜田 清と久美との共同作業で、頑張りましょう。






抑制の話 22

「抑制除去訓練」事例3

まず、D様の眼位の状態を詳しく親御様に説明しました。
アイパッドで眼球の動きを動画撮影して、交対性斜視であることを確認してもらい、親御様に実際に眼位ズレを疑似体験していただきました。

とにかく、何度も何度もしつこいぐらいに「斜視」の説明をし、斜視への理解を深めていただく努力をしました。

親御様のご協力なくして、斜視の矯正が成功(両眼視すること)するとは思えないからです。

プリズム矯正をすることにより、空間視の違和感を感じる場合もあります。
眼のトレーニングは楽しいものでもないし、トレーニングすることにより疲れることもあります。
そんな時、親御様の励ましや、共感が必要です。そうでないと、トレーニングも続きません。

調製度数は
R S-3.50D 
L S-3.25D 
の基本度数。
基本度数にしたのは、外斜位系のかたには調節と輻輳の関係でその方が好都合だからです。

プリズム矯正は、
R 5.00△ B.I.
L 5.00△ B.I.
で調製することになりました。
このプリズム量なら、掛けられそうだとのことでした。
(プリズム量は、二回の検査で決定しました)

D様には、視機能トレーニングを積極的にしていただくようにアドバイスをしました。
当店独自の簡易眼位検査道具をお渡しして、定期的な眼位チェックお願いしました。

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